ベナンでの協力隊生活


by ikes12
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【職場】
b0071421_22302381.jpg 私の配属先はウエメ・プラトー県の県教育支部(県の教育委員会)で,そこの中等教育課で働いています。
 この配属先から私に出されていた要請内容は,「教員養成カリキュラム(現職教員研修)の充実化・運営支援」でした。
 しかし,現実にはこの職場でこれらの内容に関する仕事は一切行われておらず,実際の仕事内容は管轄している学校の人事管理が中心でした。前のディレクター(県教育支部長)が日本の学校を視察した経験があり,日本の教育に興味を持っていたようで,日本人の教師が来てくれるのならということでこのような要請になったようです。職場の仕事内容と関係のない要請を出すというあたりがいかにもベナン人らしいのですが,このディレクターは私が配属される前に異動になってしまい,新しいディレクターに変わり,その人からすると頼みもしないのに日本人が来たということでおそらくいい迷惑だったと思います。

【シェフ(中等教育課長)】
b0071421_22332698.jpg 配属先のシェフ(中等教育課長)はとても親切な人で,私が配属されて間もない頃はベナンの教育システムについて詳しく教えてくれました。私が配属されたのが8月中旬で,新学年が始まるのが10月ということだったので,このシェフからは10月になったら授業の視察に連れて行くので授業のアドバイスをしてほしいと言われていました。しかし,実際には授業の視察は一回もありませんでした。今から考えると当然なんですが(この職場とは関係のない仕事なので),このあたりもいかにもベナン人らしいと思いました。

 そんなわけで,初めの半年間は何もやることがなく,というか何も期待されていなかったので,まわりの人からするとおとなしく座っていてくれればよいという感じでした。さすがに座っているだけでは暇なので,この半年間はベナンの教育プログラムと教科書の分析,国レベルで行っていた教員研修への参加,授業観察(近くの学校に直接行ってお願いした)などをして,ベナンの教育界の問題点を洗い出していました。

【教員によるストライキ】
b0071421_22373333.jpg 問題点を挙げればきりがないのですが,特に財政面に関わる問題は深刻です。教員不足,教室不足,教材不足など足りないものだらけで,どうしてもお金がないからすべて上手くいかないという発想になってしまいます。教員に対する給料の支払いが滞ったりすることもあり,教員のストライキも頻繁にあります。当然ストライキ中,授業は行われません。

 さすがに,私の立場では財政面に関することには何も手が出せないので,私のできることは何かと考え,『授業の質改善・教師の力量向上』をめざすことにしました。具体的には,『指導案の作成→シミュレーション授業→研究授業』という一連の流れを提案し,実施することを考えました。
 これまでベナンでは研究授業のような形のものはなく,指導案というものもありませんでした。そして,ベナンでは正規教員の割合がかなり低く,多い学校でも半数弱,学校によっては校長だけが正規教員で,他はすべて非常勤講師という場合も多くあります。非常勤講師は大学2年まで終えていれば誰でもでき,特に教育について学んでいる必要はなく,アルバイト感覚で非常勤講師をやっている人も多くいます。また,教員研修を受けた経験のある教員はベナン全体で20%程度しかおらず,授業の質の低さが大きな問題になっていました。その影響で,BAC(大学入学資格),BEPC(前期中等教育修了証書)の通過率がともに10%前後と信じられない結果につながっています。
[※ 日本に置き換えると,大学の合格率と高校の合格率が10%前後ということになる]

 ただ,私の職場ではこのような活動を進めようと思っても職場の仕事内容とは全く関連しないので模索していたところ,大きな転機がおとずれました。私よりも先にベナンに来ていた理数科教師の隊員が教育省の中等教育局に2人配属されており,そのうちの1人が日本の研修に参加した経験のあるベナン人教師と人脈を持っていました。また,ケニアの理数科プロジェクトの研修に参加した経験のあるベナン人教師とも人脈を持っていました。
[※ ケニアは日本の援助で中等理数科教育に対するプロジェクトを10年近く進めており,アフリカの中では教育の先進的な立場にある]

【会議の参加者】
b0071421_22435644.jpg そして,JICAスタッフの方とともに,日本やケニアの研修に参加した経験のあるベナン人教師と協力して何かできないかということになりました。調べてみると,研修に参加した経験のある数学,物理化学,生物のベナン人教師が合計14人いました。彼らを集めて理数科会議なるものを立ち上げました。そこで,彼らとともに『指導案の作成→シミュレーション授業→研究授業』の一連の流れを実施してみようと考えました。より意味のあるものにするために,彼らだけでなく教育省のお偉方にも加わってもらうことにしました。

【教育省のお偉方】
b0071421_22405621.jpg 右からDIP局長補佐(DIP:教育視学局),元教育大臣,教育省中等教育局長







【数学のシミュレーション授業】
b0071421_22504557.jpg これまでに8回の会議を開催し,その過程で数学,生物において『指導案の作成→シミュレーション授業→研究授業』の一連の流れを実施してきました。
 ベナン人教師にとっては,今まで研究授業なるものはもちろんやったことがなく,指導案の作成も初めての経験だったので苦労は尽きませんでした。
 まず,研究授業を実施する目的,指導案を作成する意義,指導案の作成方法など一から説明する必要があり,これらに関するプレゼンから始めました。私の語学力では伝えるのが難しいので,私がプレゼンする内容を日本語で作り,他の隊員にプレゼンしてもらっていました。(こんな状況だったので私の語学力は・・・)

【授業後の検討会】
b0071421_22523890.jpg 我々の考えた目的に教育省のお偉方が賛同してくれ,参加者の理解を得ることができ,何とかここまで進めることができました。しかし,日本人のペースとベナン人のペースは当然ちがうので,何をやるにも時間がかかりました。指導案の打ち合わせをしようと約束していても,時間に遅れてくるのはあたり前で,当日何の連絡もなく来ないということもありました。

【数学のモデル授業】
b0071421_22534529.jpg 回を重ねるごとに,教育省のお偉方の理解が増し,我々としてはやりやすくなっていきました。(ベナン人は権威に弱く,我々が言ってもなかなか素直に聞き入れてもらえないが,同じことをお偉方が言うと素直に聞くという傾向が強いので)


【授業後の検討会】
b0071421_2255594.jpg まだまだ,基本的な授業法などで改善していかなければならない点は多々ありますが,まずははじめの一歩を何とか踏み出すことができた状態です。





【プレゼンの様子】
b0071421_2256111.jpg 私のパートナーだった隊員が11月末に日本に帰国したため,つたないフランス語で私がプレゼンをすることになってしまいました。






 帰国まで約1か月になり,ベナンでの残された時間も残りわずかとなってきました。この残りの1か月で,あと物理化学のシミュレーション授業,研究授業を行う予定をしています。現在ベナン人教師とともに指導案の作成中で,まさにラストスパートという状態です。最後まで慌ただしい状態が続きそうです。
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# by ikes12 | 2008-02-23 23:04
 先週の終末に,ガンビエ(水上都市)に行ってきました。ガンビエは,奴隷貿易の行われていた時代に,奴隷狩りから逃れるために人々が移り住んできたところです。
b0071421_22195381.jpg ポルトノボから舟(モーター付き)でノコエ湖を横断してガンビエに行ってきました。途中マングローブもあり,そこではカキも採れるそうです。(残念ながらまだ食べたことはありません)



b0071421_2222880.jpg 途中,多くの舟とすれ違い,中には左のように,あふれんばかりの荷物をのせているものもありました。また,ナイジェリアから,明らかに密輸と思われるガソリンを運んでいる舟もありました。





【ガンビエ】
b0071421_22242083.jpg 庶民の交通手段はもちろん舟しかありません。大人も子どももみんな舟を器用に扱っていました。







b0071421_22265092.jpg ものを買うのも舟の上で,トマトやタマネギなどの食材をのせた舟が集まっており,住民は当然舟で買いに行きます。







b0071421_22281498.jpg 観光客用に,ホテルやレストラン,お土産物屋まで水上にありました。








b0071421_22302762.jpg わずかな陸地部分には小学校がありました。水の多い季節には陸地の多くが水没してしまうため,教室も高く作られています。
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# by ikes12 | 2007-08-23 22:34

久々の更新です。

 なかなかネットをゆっくりやる余裕がなく,ずいぶん間があいてしまいました。
仕事のほうは順調に進んでいますと言いたいところですが,やはりなかなか共通理解が得られず,停滞することもしばしばです。言葉の壁がもちろん大きいのですが,文化風習の壁もかなり大きなものです。

 仕事の様子などはなかなか写真を撮る余裕がないので詳しくお伝えすることができませんが,その代わり,先週末ガンビエ(水上都市)に行ってきたのでその様子をお知らせします。
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# by ikes12 | 2007-08-23 22:15
b0071421_2135617.jpg 3月19日(月)にジャコトメまで授業の視察に行ってきました。
 日本の援助でケニア(ケニアはアフリカの中では理数科教育が進んでいる国)で研修を受けてきた教師の授業の視察でした。
 ジャコトメは私の住んでいるポルトノボから東西の正反対で,コトヌーから車で2時間半ぐらいのところにあります。
 今回の視察は,私の配属先(ジャコトメは管轄外)の仕事で行ったわけではなく,JICAが今後ベナンの理数科教育に力を入れていきたいということで,その一環として参加させてもらいました。

 視察した授業は,ベトメー中学校の3ème(中学4年生)の理科「凸レンズ」の内容でした。「凸レンズ」の内容は日本では中学1年生で学習する内容です。これだけ聞くと,やはりベナンは教育内容のレベルが低いのかと思うかもしれませんが,全体を通してみると5ème(中学2年生)で水溶液のモル濃度(日本では高校1年で学習する)の内容が出てきたりしており,ベナンの教育プログラムが要求している学習内容のレベルは日本よりも高いぐらいです。ただし,プログラムが要求しているレベルと生徒の実際のレベルがかけ離れすぎているので,そこが大きな問題です。
【授業の様子】
b0071421_2140171.jpg 授業を行った教師は,この地区のCP(コンセイユ・ペダゴジックという教科指導員のような立場)で,説明の仕方や生徒とのやりとりなど,今まで私がベナンで見た授業の中でもかなり質の高いものでした。ただし,補足説明や板書の構成など,さらに改良できる点はありました。

b0071421_21423532.jpg クラスの生徒数は67人。かなりぎゅうぎゅう詰めの状態ですが,これがベナンでは普通です。
 生徒全員が教科書を持っておらず,当然問題集などもないので,勉強する手段はノートしかありません。

【教室】
b0071421_214482.jpg この教室がベナンでは一般的。ブロックを積んでセメントで固めただけのもの。ベナンの建物は基本的に高いものでもブロックとセメントで造られており,きれいに見えるかどうかは色を塗るかどうかというところ。地震がないから許される建て方です。

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 今回の視察のもう一つの目的は,日本の資金援助で建てられた実験室の状況を確認することでした。
【ジャコトメ中学校】
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 1つの建物で1つの実験室になっている。机の数は24個あり,かなりの人数でも使えるようになっている。
 しかし,水道の蛇口やコンセントの差し込み口がほとんど壊れていた。蛍光灯も半分ぐらいなかった。理由を尋ねてみると,生徒が休み時間に壊して持って行ってしまったらしい。どうやらどこかで売ってお金に換えているようである。
 実験準備室の中には,わずかな薬品とわずかな器具しかなかった。これでは生徒が実験するのは到底不可能で,教師の演示実験すらままならない状態である。

【ポソトメ中学校】
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 こちらは1つの建物で,実験室が2つとパソコン教室が1つという造りになっている。ちょうど実験室の1つで授業が行われていた。しかし,実験はまったく行われておらず,ここには実験器具や薬品が1つもなかった。机の数も40人分しかなく,普通教室の机を隙間において授業を行っていた。
 もう1つの実験室は,本が山積みにされた状態で倉庫のような感じになっていた。そこの学校の教師に尋ねてみると,「図書館」だという答えが返ってきた。ここに積まれていた本には使われた形跡が全くなかった。
 パソコン教室には9台のパソコンが設置されていた。中に入ることはできなかったのでどの程度使えるかは分からなかったが,一応授業で使っているらしい。教室の隅には壊れていて使えなさそうなものが積まれていた。
 この3つの教室すべてにエアコンがついていた(最初の実験室の写真参照)。確かにパソコン教室には必要だと思うが,実験室には必要ないはずである。とはいえ,電気容量が足りなくて使えないらしい。

 日本の援助で造られたものが,このような状態になっているのを目の当たりにして,思わず寂しい気持ちになりました。何とか有効活用する道を探っていかなければなりません。
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# by ikes12 | 2007-03-22 22:06

授業のようす

 1月に入ってから,近くのリセビアンゼンという学校(中高一貫)に授業の見学に行っています。当然,日本とちがうところが多く驚くこともたくさんあります。

【リセ・ビアンゼン】
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 まず,1日の日程は基本的に次のようになっています。
 1時間目  8:00~10:00  
 2時間目 10:00~12:00
 お昼休み 12:00~15:00
 3時間目 15:00~17:00
 4時間目 17:00~19:00
※ 体育は7:00~10:00,16:00~19:00に行っている
  (おそらく昼間は暑すぎるので)

 1つの授業は2時間が基本になっていて,放課はとられていません。これをはじめに聞いたときは,2時間もずっと勉強して放課もなしですぐに次の授業というのはきつすぎると思っていましたが,実際は時間通りに授業が行われることはありません。教師(生徒も)が大体10分から15分ひどいときには30分ぐらい遅れてきて,授業が終わるはずの時間の30分前ぐらいから授業が終わっていきます。きりのいいところで終わるという感じです。だから自然と休み時間はできます。
 2時間ぐらいの幅を持たせておかないと,実質1時間ぐらいの授業が成立しないということだと思います。1つの授業を1時間にするというのはベナンでは難しそうです。


【高校3年生】
b0071421_1105218.jpg 1クラスの生徒数は50~70人ぐらいで,教室の中はいっぱいという感じです。教科書を持っている生徒は全体の4割ぐらいで,残りの生徒はノートしか持っていません。問題集とかはなく,勉強をする用具はノートしかないのでとにかく黒板を写さなければなりません。
 テストに合格しないと進級できないので,中学生でも留年する場合が多くあります。また,お金がないために通い続けることができず,働いてお金を貯めてから復帰するということも多いようです。
 日本のように就学年齢というものがはっきりしていないので,18歳で中学2年生という場合も結構あるようです。中には,中学3年生で子どもがいるということも・・・。


 教師は生徒から一目置かれているという感じで,教師の中には近くを歩いている生徒を捕まえて食べ物を買いに行かせることがよくあります。生徒はそれが当たり前という感じで素直に買いに行っています。教師が荷物を持って歩いていると,必ず生徒のだれかが「荷物を持ちましょうか」と言ってきて,その荷物を運んでいる。このあたりは日本とはずいぶんちがいます。
 生徒にとって教師は絶対のようで,言うことを聞かないと体罰をされたり,罰を与えられたりします。木の棒を持っていて,それでたたく教師はたくさんいます。


【黒板】
b0071421_11453.jpg 授業の進め方は,教科書を読み,教科書に質問が書いてあるのでそれを教師が簡単に質問し,正解を板書するという形です。話し合うとか考えるということはあまり行われていません。生徒にとっても教師の板書する正解をノートに写すことが授業の主体となっています。
 黒板の質は決して良くなく,チョークもほとんど白のみなのでかなり見にくい状態です。しかし,黒板があるだけでも良しとしなければいけません。

 生徒の授業を受ける態度は,日本人の目から見ると決してほめられるものではありません。私語,立ち歩き,外に出て行くなど基本的な授業を受ける態度が身についていません。ただし,ベナン人の教師たちはあまり問題に思っておらず,それが当たり前という感じで授業をやっています。このあたりを改善するだけでもずいぶん変わってくると思うのですが,ベナン人教師にこれは大きな問題だと言ってもあまりピンとこないようでした。


 ベナンでは,教員不足,教員の質の低さがやはり大きな問題になっています。教員不足については調べてみて驚いたのですが,私の職場が管轄している78校のうち20校は正規教員が1人もおらず,すべてが非常勤でした。正規教員が多くいる学校でも半数にも満たず,非常勤に頼らざるを得ない状況になっています。そうならば,非常勤を正規教員として採用すればと思うのですが,他に別の仕事をしていたり,大学生でアルバイト代わりにやっていたりする人が多いようです。正規教員になるためにはかなりのお金と時間がかかるようなので,そこまでする人も少ないようです。

【ストライキ】
b0071421_14427.jpg 教員の給料も影響しているようです。正規教員の給料は60000~300000CFA(12000~60000円)ぐらいで,これはベナンの中ではよい方の給料なんですが,支払いが滞ったり,ボーナスが支給されなかったりすることがよくあるそうです。
 非常勤の給料は時給1000CFA(200円)で週6時間までと決められているようで,最大でも月に24000CFA(4800円)ぐらいしか稼げず,これだけでは生活できないので他に仕事をしている人が多いようです。この非常勤の給料の支払いも滞ることがあるようです。
 このような状況なので正規教員や非常勤によるストライキが度々行われます。ストライキがあれば当然授業は成立しないので,学校が休みになります。この1月だけでも6日間ストライキが行われました。


 ストライキが度々あるので授業の進度にも影響しています。年間計画によれば今頃は全体の半分(3単元目終了)ぐらい進んでいなければいけませんが,現状はようやく1単元目が終了するという状況です。
 これはストライキだけでなく授業のスピードにも問題があります。1回の授業で進むのは教科書1~2ページ程度で,このペースでしっかりやったとしても到底すべての内容は終わりません。すべての内容を終わらないまま上の学年に進級するということが当たり前になっているようです。
 また,場合によっては非常勤すら未だに見つからず,10月から1学期が始まっているのに現在も授業が行われていないということもあります。
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# by ikes12 | 2007-02-06 01:12